持続可能な良い変化を生み出す
本年度が始まった2021年7月1日、私たちは新型コロナウイルスへの対応、中でも特にワクチン接種へのアクセス向上に取り組んでいました。それから一年近く経つ現在も、世界的大流行が収まる兆しはなく、さらに私たちは、さまざまな人道危機とウクライナでの戦争、そして環境問題にも直面しています。
このような中、ロータリーの会員は、よりよい世界を築くために互いに、そして地域社会と連携して行動を起こしています。国際ロータリー職員もまた、より大きなインパクトをもたらし、参加者の基盤を広げ、参加者の積極的なかかわりを促し、変わりゆく世界に適応していくために、あらゆる面でリソースとツール、そしてサポートを提供してきました。
二回目となる大規模プログラム補助金の受領者が間もなく発表され、これからも平和の土台となる環境づくりに力を尽くしていきます。私たちは、「多様性、公平さ、インクルージョンの行動規範」を導入し、現会員と今後の会員のニーズに革新的な方法で応えようとするクラブを支援しています。また、寛大な寄付者の方々のおかげ、そして「世界ポリオデー」、「世界予防接種週間」、「寄付の火曜日」などの成功によって、ロータリー財団にも揺るぎない支援が寄せられています。
「世界を変える行動人」がこれまでにもなく必要とされている今、世界に変化をもたらす意欲に満ちた140万人の皆さまに、心より感謝いたします。
— ジョン・ヒューコ(国際ロータリー事務総長兼CEO)
変化をもたらす
ウクライナの人びとへの人道的支援
ロータリーとクラブ、そしてそのパートナー団体は、ウクライナでの戦争の被災者や深刻な人道的危機に対する援助を提供するために、迅速にリソースを動員しました。
会員、クラブ、地区は、ロータリー財団を通じて寄付を寄せるとともに、財団からの補助金を支援活動に活用しています。ウクライナと近隣諸国のロータリー指定地区は、難民やその他の人びとを援助するために、6月30日まで災害救援基金から最大5万ドルの緊急補助金を申請できます。直接支援を行うそのほかの地区は、6月末まで25,000ドルの災害救援補助金を申請できます。
ロータリー地区は、ウクライナ関連の人道的補助金を支えるために、未配分の地区財団活動資金(DDF)を災害救援基金に充てることができました。4月30日時点で、この目的のために1,310万ドル以上の寄付が寄せられ、74件の災害援助補助金が承認されました。
ロータリーはまた、米国を拠点に国連難民高等弁務官事務所と活動する非営利組織と連絡を取り合いながら、ウクライナ国内と近隣諸国の避難民のニーズへの対応に備えています。災害援助におけるロータリーのパートナー団体であるシェルターボックスは、現地のロータリー会員と協力して、ウクライナ避難民に仮設住宅やその他必需品を提供しています。
また、「難民、強制退去者、移住者のためのロータリー行動グループ(The Rotary Action Group for Refugees, Forced Displacement, and Migration)」も、難民受け入れ支援や自国で住まいを追われた人びとへの援助について、クラブと地区に助言をしています。
欠かすことのできない予防接種
予防接種は、人びとを病気から守るための最も安全で効果的な方法です。現在も新型コロナウイルスが世界的に蔓延する中、RI理事会とロータリー財団管理委員会は、世界的流行を終息させ、各地で予防接種を推進するよう会員へ呼びかけるために、ワクチン接種を強く支持する見解を表明しました。
これを受け、多くのクラブが行動を起こしました。例えばガイアナでは、デメララ・ロータリークラブの会員が、疾病との闘いにおける30年にわたる経験を活かして、脆弱な先住民コミュニティに新型コロナワクチンと支援を提供しました。
教育、アドボカシー活動、行動
「学び」「アドボカシー活動」「奉仕」はすべて、ロータリーのDNAとも言える部分です。そしてこれらが共に、長期的で持続可能な変化の土台を築いています。ネパール、ヴァルミキ・インターアクトクラブは、2021年インターアクト賞(ビデオ部門)に応募した動画の中で、奉仕を通じた学習のアプローチを紹介しました。会員たちは、インタビュー、現地調査、アンケートを通じて、何が経済(農業)に貢献し、何がコロナ禍による失業につながったかを学びました。この知識に基づき、クラブは40世帯に400羽の雛を提供し、人びとが小さな事業を立ち上げ、経済的な改善につながる技能を習得するのを助けました。
またこの1年に、130名のロータリー平和フェロー(専門能力開発修了証取得を目指す80名と修士号取得を目指す50名)が、七つのロータリー平和センターで学び始めました。フェローは、平和と開発に関する問題について1、2年間学び、いずれその知識を活かして地元と世界で平和のリーダーとして各種機関で活躍していきます。
大規模プログラム補助金
ロータリーの大規模プログラム補助金は、入念に立案され、成果が実証されている奉仕プロジェクトを、より多くの人により大きなインパクトをもたらすプログラムへと拡大するのを助けるものです。本年度の補助金受領者は、数日後に発表されます。
この補助金を最初に受領したプログラム「Partners for a Malaria-Free Zambia(マラリアのないザンビアのためのパートナー)」は、マラリア罹患率の高いザンビアの二つの州で、マラリアを90パーセント削減することを目指しています。このプログラムを通じて2021年以来、予定されている2,500人の新しい医療従事者のうちの1,300人以上が研修を受け、既に活動を開始しています。こうした医療従事者の投入により、迅速にマラリアの診断と治療が行われるようになりました。
ロータリーがもたらすインパクトが地元で認識されるにつれ、ロータリーの活動への参加に対する関心も高まっています。ザンビアでは新しいクラブが結成され、参加者の基盤が広がっているほか、同地域の会員の積極的な参加が促されています。
ロータリーのパートナーシップの価値
ロータリーは、パートナーシップを通じて、末永く続く変化を生み出すという共通のビジョンを持ったほかの組織とつながることができます。Peace Corps(米国平和部隊)と経済平和研究所とのパートナーシップが延長され、引き続き平和構築者としての活動で協力していくこととなります。
教育のためのグローバルパートナーシップとの協力では、女児の就学率を高めることに重点的に取り組んでいます。このパートナーシップは、適切なリソースの公平な配分を目指すプロジェクトを後押しする会員たちの努力によって成り立っています。ケニアとガーナの会員は、公共の教育関係者や民間企業と協力して、女児の教育の重要性について家族や女児たちの啓発を行っています。
また、ロータリーとシェルターボックスとの正式なパートナーシップが10年を迎えました。実際にはシェルターボックスとの協力は20年以上にわたり、自然災害や紛争後の復興支援において200万人以上の人びとに緊急避難所、必需品、研修などを提供してきました。
ポリオ根絶まであと一歩
ポリオの根絶は今も、ロータリーとそのパートナー団体による世界ポリオ根絶推進活動(GPEI)での一番の目標です。野生型ポリオによる症例数が史上最少となっている現在、予防接種活動を加速し、監視活動を強化し、より多くの子どもに予防接種を行うための新しい戦略を用いることによって、私たちはポリオの伝播を食い止めるまたとない機会を迎えています。
ポリオ根絶の取り組みは今も続いており、私たちの仕事は終わっていません。しかし、世界中の会員の皆さまからのご支援のおかげで、前向きな成果が見られています。
GPEIの新しい戦略の一環として、人びとの基本的なニーズを満たすために、ポリオ予防接種活動を地域社会のより大きな活動に組み入れることがあります。パキスタンのカラチはずれにあるカディム・ソランギ・ゴスは、世界に残る数少ない野生型ポリオウイルスの温床の一つです。同国でワクチン接種率が最低となっているこの地域では、住民の大きな関心は安全な水や電気、医療といった問題です。このような基本的ニーズを満たすことで、GPEIのパートナー団体に対する地元の人びとから信頼が高まり、その結果、住民たちはポリオワクチンの提供者を自宅に迎え入れるようになりました。
ロータリー財団を通じて変化をもたらす
毎年私たちは、ロータリー財団のために壮大な募金目標を立てています。過去数年間には目標を上回る成果を達成しており、2021-22年度も同様になると見込まれています。本年度は4億1,000万ドルの募金を目指しており、4月30日現在で3億5,020万ドルが寄せられています。この目標は達成可能です。
本年度に財団は、募金活動でもう一つの達成を成し遂げました。昨年10月の「世界ポリオデー」に75万ドル近くの寄付が寄せられ、その1カ月後の「寄付の火曜日(Giving Tuesday)」には、ロータリーで記録となる120万ドル近くが集まったのです。中でも積極的に寄付を行ったのは、台湾、シンガポール、米国、バハマ、インドのクラブでした。
また、「Raise for Rotary」を通じて財団のためのオンライン募金を始める会員も増えています。本年度、1,359以上の募金ページで、895,700ドルが集められました。「Raise for Rotary」は現在、オーストラリア、カナダ、米国の通貨で行われていますが、今後ほかの通貨も利用可能となる予定であり、これまで以上の成功が期待されています。
ロータリー会員としての体験の価値
ロータリーの成長
参加の促進と会員の増加は、ロータリーの重要な優先事項です。4月30日現在、168,460人の新会員がロータリーに入会し、本年度中に1,708のクラブが結成されました。
新会員のほとんどは、現会員によってロータリーに紹介されています。25人以上の新会員を推薦した会員を称えるために、新会員推薦者を認証する「メンバーシップ・ソサエティ」が立ち上げられ、これまでに、800人近くの会員がさまざまなレベルで認証されています。
インクルージョンへの障壁を取り除く
会員は、ロータリーが多様性、公平さ、インクルージョンを実践する団体であることを求めています。このため私たちは、さまざまな背景、文化、国の人びとがこれまで以上に歓迎され尊重される環境をクラブが築けるよう支援しています。
ロータリーは、今後の活動指針を立てていくための「多様性・公平さ・インクルージョン」(DEI)に関する初のアンケート調査の結果を公表し、DEIへのロータリーの取り組みを強化しました。また、「DEIの行動規範」を導入したほか、ラーニングセンターに新たにDEI関連のコースを追加しました。
クラブと会員のためのリソースは、rotary.org/deiをご覧ください。また、性的少数者の人びとを支援するプロジェクトに取り組む「LGBT+ ロータリー親睦活動グループ」などのグループと協力することもできます。
ローターアクトの躍進
ロータリーの未来を革新的で適応力のあるものとするために、本年度も、ローターアクトクラブを加盟クラブの一種とする決定に基づいて取り組みを進めてきました。ローターアクトクラブは現在、「ロータリーへの入会(rotary.or/join)」のページで入力された入会候補者情報の確認や、クラブ役員のロータリーへの報告ができます。これにより、ローターアクトクラブの活動に必要な情報やツールへのアクセスが可能となります。
さらに、ローターアクト会員が地区委員会の委員となることも可能になりました。デンマークのコペンハーゲン・ノード・ローターアクトクラブのフィリップ・フリントさんは、ローターアクターとして初のロータリー公共イメージコーディネーターに任命されました。
また、ローターアクターをより多くの賞に推薦できるようになりました。イング・ボリスウォルター・ローターアクトクラブ( ベネズエラ)のマリア・バレンティーナ・マルティネス・ベロさんと、オリエンテ・デ・タルカ・ローターアクトクラブ(チリ)のイグナシオ・ゴンザレス・メンデスさんは、超我の奉仕賞を受賞した最初のローターアクト会員です。
2022-23年度からは、ローターアクトクラブがグローバル補助金の提唱者となれるほか、地区補助金の資金を活用することができます。ローターアクターはまた、国際ロータリー人頭分担金の納入を開始します。これにより、ローターアクトクラブへの支援が拡充され、ローターアクトクラブの活動をさらに充実させることができます。
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168460.00
ロータリーに入会した新会員
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1708.00
本年度に加盟認証されたクラブ
ロータリーへの関心を示す人も増えています。本年度4月30日現在、My ROTARYを通じて16,345件の入会問い合わせがあり、2021年度と比べて27パーセント増となりました。
これは、ロータリーのサイトがこれまで以上に機能的になったこと、地区リーダーやクラブリーダーとのコミュニケーションが増えたこと、ロータリーでのモバイル体験が充実したこと、会員が入会候補者をクラブに紹介できることなどに起因していると思われます。
また現在、ローターアクトクラブ入会についても問い合わせができるようになり、さらなる成長の機会につながっています。
クラブの枠組みを超えた体験
新会員を増やすことは重要ですが、会員を維持することも同様に大切です。アンケート調査によると、会員がロータリーにとどまる理由は、ロータリーで築かれる友情、そして奉仕の機会であることがわかっています。
ロータリーでは、会員がクラブ以外で人びとと出会い、ボランティア活動ができる多くのプログラムを提供しています。
会員は、150カ国以上にある90以上のロータリー親睦活動グループを通じて、共通の職業、アイデンティティ、趣味を中心とするグループの一員となることができます。
この1年間に、以下の八つの新しい親睦活動グループが結成されました:
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キャンピング
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起業家
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アルザス地域
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凧
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退役軍人
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ピックルボール
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都市ガーデニング
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ヴィンテージ収集
150カ国以上のロータリー会員とその友人はまた、食用植物の栽培や糖尿病など、27のロータリー行動グループで各自の関心や専門知識を活かしています。本年度、これらの行動グループを通じて、500人以上のローターアクター、4,800人以上の非会員、3万人以上のロータリー会員が、2,400以上のプロジェクトを支援しました。
ロータリー会員ではなくても、奉仕活動に参加し、変化をもたらしたいと考えている人は、ロータリー地域社会共同隊(RCC)に参加できます。フィリピンのパシッグ・プレミア・ロータリー地域社会共同隊のように、今年結成された500近くのRCCを含め、現在世界に12,000のRCCがあります。パシッグ・プレミア・ロータリークラブの会員により結成された同RCCは、2020年1月のタール火山の噴火によって避難を余儀なくされた人びとを助けました。新型コロナウイルスが同国で蔓延し始めた後には、同RCCが、リモート学習教材を低コストで印刷できるように学生を支援し、経済的困難と孤立に直面した家庭を助けるために食糧バンクを設置しました。
今日の会員のニーズと期待に応える
現在のロータリー会員としての体験は、よい意味で、10年前と比べてかなり違ったものとなっています。クラブは、個々の会員や入会希望者のスケジュールや関心に応えるための適応力を示しています。そのようなクラブの例をいくつかご紹介します:
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モトシクリスタス・ロータリーEクラブ
第4521地区(ブラジル)内のクラブの会員は、バイク愛好家のロータリー親睦活動グループを通じて、新しい形のロータリークラブを結成しました。このクラブは、オンラインで例会を開き、バイク関連の文化や行事を取り入れて社会奉仕活動や環境プロジェクトを行っています。
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ウルサン・フリーダム・ロータリークラブ
韓国、蔚山のウルサン・フリーダム(Ulsan Freedom)ロータリークラブは、脱北者が韓国の地域社会に適応するのを支援するために元脱北者によって結成されました。クラブ会員はロータリーでの人脈を駆使して、就労、医療、教育面での支援や法的援助を行っています。現在、クラブ会員の半数は元脱北者です。
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ゴールドコースト・パスポート・ロータリークラブ
オーストラリア、クイーンズランド州のゴールドコースト・パスポート(Gold Coast Passport)ロータリークラブの例会は、親睦と奉仕行事を兼ねて行われています。同クラブは、ボランティア活動に関心があり、柔軟な参加を求める若い人びとを引きつけるため、各会員に年に少なくとも30時間の奉仕活動を行うことを推奨しています(ただし義務ではありません)。また、ほかのロータリークラブと協力して、会員が自分の専門的知識を活かせるプロジェクトを行っています。
ロータリーのストーリーを伝える
ロータリーのストーリーを効果的に伝えることで、ロータリーへの関心と認識が高められ、活動のパートナー、寄付者、会員の参加を促す新しい機会が生み出されます。
米国のフィラデルフィア・ロータリークラブは、ロータリーのブランドリソースセンターを活用し、オンラインでその存在感を発揮するようになりました。同クラブは、最近更新されたブランドの指針や視覚的素材、ロゴのテンプレートなどを使い、クラブの新しいウェブサイトをつくり、会員が自らの体験や、クラブが地域社会にもたらしたインパクトを紹介する動画を制作しました。その後、同クラブのウェブサイト訪問者数が増え、会員数も20パーセント増加しました。新会員の多くは、新しいウェブサイトを通じて同クラブについて知ったと言います。
地域社会に変化をもたらすロータリーの力を世界に伝えましょう。