ロサンゼルス地域で発生した大規模な山火事により、少なくとも1万2千棟の建物が崩壊し、住宅地が焼け野原となり、数万人が避難を余儀なくされました。
2025年1月7日、ビル・“チリー”・チリングワースさんはカリフォルニア州パシフィック・パリセーズの自宅を出て、60マイル南にある取引先に向かいました。その日は、普段と変わらない晴れた火曜日でした。
しかし、彼がこの自宅を目にするのは、これが最後となりました。
午後、成人した娘から、チリングワースさんと婚約者が住む町の近くの渓谷から山火事の煙が太平洋岸に迫っているのを見たと電話がありました。
最初は気にも留めませんでした。というのも、彼の住む地域は緑の芝生が広がる平坦な土地で、周囲に乾いた草地もないため、山火事の危険はほとんどないと考えていたからです。しかし、携帯電話の通知が鳴って避難指示が出た瞬間、突如としてパニックに陥りました。急いで自宅のある北に向かって車を走らせ、避難時に持ち出すことになっている「p」の付くもの(「人びと=people」、「ペット=pets」、「写真=pictures」、「書類=paperwork」)を持って避難するよう婚約者に電話で伝えました。
サンタモニカ近くのピザ屋で婚約者と会うと、携帯電話にまた通知が届きました。新しい通知音が鳴るたびに、希望が少しずつ失われていきました。「自宅の寝室にある煙探知機が煙を検出したんです……。5分後、台所が非常に熱くなっているという通知が来ました……。さらに5分後、洗濯室で過剰な熱が検出されたという通知が届き、そしてついには玄関のドアが開けられたという通知が届きました。その後も、玄関ドアがまだ開いているという通知が2回届き、30分後に通知は完全に止まりました。そのとき、家も何もかも失くしてしまったことを悟りました」
チリングワースさんは、独自のユーモアを交えてこの辛い体験を語ります。火事がきっかけで、彼と婚約者は30年間の禁酒を破ってしまったと笑いながら話します。靴や下着を買うためにアウトレットモールに行った際、自分が数千人の避難者の一人に過ぎないことに気づき、再出発できるだけの経済的な余裕があるだけ幸いだったと感じました。
しかし、電話インタビューの中で、彼の声は2度震えました。自分の住んでいた地域が燃えているのをテレビで見たときの「深い悲しみ」、そして地域社会での奉仕活動で「与える側」と「受け取る側」の両方を体験したことについて話したときでした。
ロータリーのネットワークが被災者を支援
ロータリーは支援を行う側と受ける側をつなげる場であると、チリングワースさんは言います。35年来のロータリー会員で、サンタモニカ・ロータリークラブの会長エレクトである彼の元に、世界中のロータリー仲間から支援の申し出が続々と届いています。
このつながりが、彼が2回の大規模な募金イベントを計画し、参加する際の支えとなっています。3月1日には、毎年恒例のクラブの150,000ドル・チャリティーガラが行われ、その収益の大部分が山火事の被災者救援に使われる予定です。チリングワースさんはまた、1月下旬にシアトルで行われる募金イベントで、山火事の経験についてリモートで講演することになっています。
「迅速に行動を起こすのがロータリー」とチリングワースさん。彼のクラブでは、100人以上いる会員のうち四分の一近くが自宅を失ったにもかかわらず、積極的に支援活動を行っています。近隣にあるもっと小さなパシフィック・パリセーズ・ロータリークラブでは、全会員が家を失い、クラブの例会場も焼けてしまいました。
被災者の支援においては、迅速さだけでなく、的確さも重要だと、ブレイディ・コネルさん(ロータリー第5280地区ガバナーノミニー、プラヤ・ヴェニス・サンライズ・ロータリークラブ会員)は強調します。
支援したいという気持ちがあっても、やみくもに物資を集めるのではなく、より計画的なニーズ調査が必要だと、過去の教訓から学びました。「地域とのつながりが深いロータリアンの力がここで発揮される」とコネルさんは言います。
ロータリー会員たちは、避難者のために保険や連邦緊急事態管理局(FEMA)の書類作成を手伝ったり、空き部屋を提供したり、必要な資金や物資(衣服や食料)を届けたりしています。しかし、支援活動にはもっと長期的な視点が必要だと述べるコネルさんのクラブでは、サンタモニカのクラブと連携し、「自宅の焼け後に戻った被災者が必要とする支援」に目を向けています。
両クラブは、自宅の焼け跡に戻った被災者たちが灰の中から安全に所持品を見つけられるよう、ふるいと防護具を提供しています。150個のふるいを地元のホームセンターが寄付したほか、会員たちは保護用ゴーグル、作業着、手袋、ブーツなどの防護キットを購入するために第5280地区の山火事災害救援基金からの補助金を申請しました。
ロサンゼルス全域でロータリーの活動を指揮しているのは、第5280地区ガバナーのアルバート・ヘルナンデスさんです。彼は、1月下旬の時点でまだ燃え続けている2カ所の間に位置する町で、ホームレス支援の非営利団体を運営しています。この活動を通じてこれまでも人びとのニーズに対応してきたヘルナンデスさんによると、ニーズは「寄付金」と「精神的な支え」の二つのカテゴリーに分けられます。
「寄付金があれば、必要なものを必要なときに買うことができる」とヘルナンデスさん。彼は、保管スペースがないためにロサンゼルス地域にある複数の避難センターが食料や衣類の寄贈を断っているのを目にしてきました。
地区の山火事災害救援基金には1月20日までに25万ドルが寄せられており、この資金は地域の支援団体や、家や事業所を失ったロータリー会員への支援、さらにクラブが立ち上げたプロジェクトへのマッチング補助金として使われます。
ヘルナンデスさんは、災害時に見られる地域社会の強い絆を「精神的な支え」と呼びます。危機対応時のこのような親密な絆は、国内外に広がり、多くの支援の申し出を呼び起こしていると彼は言います。特に、長年にわたり海外で奉仕活動を行ってきた彼にとって、今回の山火事でロータリーの奉仕の受け手になったことは感慨深い経験でした。支援を申し出たクラブには、今も戦争が続くウクライナのクラブもありました。
今後ますます厳しくなる火災シーズンについて、ヘルナンデスさんは警鐘を鳴らします。「多くの人は、私たちが家を失ったことを心配しています。しかし、事業も失ったことや、学校が焼けてしまったこと、そして子どもたちが学校に通えなくなったことも忘れてはなりません」と彼は言います。「日常生活にいつ戻れるのか、人びとは不安を抱えています」
— 2025年1月