10月24日にオンラインで行われた2021年世界ポリオデー特別プログラムでは、ロータリーの目標である「ポリオをなくす」ことが手の届くところまで来ていると、世界保健分野の専門家が述べました。「Delivering on our promise of a polio-free world」(ポリオのない世界という約束を果たす)と題された30分間のプログラムでは、ポリオ根絶活動の進捗状況と今後の課題についての情報が提供されました。
2021年の現在までに報告された野生型ポリオの発症例は世界全体で2件のみで、ポリオ常在国であるアフガニスタンとパキスタンでそれぞれ1件の感染が報告されています。これは今までで最も少ない数です。
質疑応答では、世界保健機関(WHO)東地中海地域担当ディレクターのハミド・ジャファリ博士が、成果を裏付ける要因を挙げました。それらは、新型コロナウイルスによる中断期を経て、ポリオの大規模な予防接種キャンペーンが再開されたこと、過去に発生した野生型ポリオによる自然免疫、新型コロナウイルスによる旅行や人口移動の制限などです。
2つの常在国で同時にこのような減少が見られるのは前例のないことだと、ジャファリ氏は述べています。
ジャファリ氏は、発症数の減少は医療従事者にとって好機であるとしながらも、夏はポリオウイルスに感染する確率が高い季節であり、ポリオが再燃する可能性があると警告しています。ジャファリ氏は、質疑応答の司会を担った「TIME」誌編集長、ジェフリー・クルーガー氏に対し、だからこそ今、この機会を有効に活用すべきだと強調しました。
また、ジャファリ氏は、アフガニスタンにおける政治的変化や治安の問題についても言及し、アフガニスタンのポリオプログラムは、不確実性の中で活動を適応させることに慣れていると説明しました。「現在は、大規模な予防接種キャンペーンを実施するために、アフガニスタンのすべての地域にアクセスできるような機会も訪れている」と述べました。
WHOとUNICEF(国連児童基金)の発表によると、アフガニスタンでは11月初旬に全国的な戸別訪問によるポリオワクチン接種が再開される予定です。これにより、過去3年間ワクチン接種が禁止されていた地域の子どもたちにも接種が可能になります。
アフガニスタンの状況が変化する中、パートナー団体がポリオ根絶プログラムの中立性と公平さを維持することが最も重要だとジャファリ氏は話します。「いつものように、私たちはすべての関係者と協力していきます」
アフガニスタンのポリオプラス委員長であるモハマド・イシャク・ニアズマンド氏は、パキスタンのポリオプラス委員長であるアジズ・メモン氏とのビデオ演説で、ジャファリ氏の言葉を繰り返しました。
二アズマンドさんは次のように話します。「アフガニスタンでは、変化の中にあっても、ポリオ根絶が最優先事項であることを確認するため、ロータリーとパートナー団体があらゆる関係者と協力しています。子どもたちが命を救うポリオワクチンやその他の小児向けワクチンを確実に入手できるよう、作業が進められています」
ロータリー財団管理委員でもあるメモン氏は、ロータリーは政府、地域社会、宗教のリーダーとの信頼関係を築いていると話します。「ポリオ予防接種と並行して幅広い医療サービスを子どもや家族に提供することで、より良い医療を実現し、ワクチンの受け入れ態勢を整えることができる」と語ります。
未来への戦略
今年、世界ポリオ根絶推進活動(GPEI)は、循環型ワクチン由来ポリオウイルスへの対処を含め、すべてのポリオウイルスを根絶するための5年間(2022~2026年)の新戦略を発表しました。ロータリーとGPEIのパートナー団体は、ポリオ根絶に向けて残された障壁を特定し、目標達成のためのアプローチを策定しました。この計画は、革新的な方法やツールを用いながら、実施とアカウンタビリティに重点を置くことで、ポリオのない世界を達成、維持することを目的としています。
2つの国で同時にこのような減少が見られるのは、本当に前例のないこと
ハミド・ジャファリ博士
世界保健機関(WHO)東地中海地域担当ディレクター
強調すべきは、ポリオ発生時における対応時間の短縮、ワクチン需要の拡大、医療やワクチンへのアクセス向上、政府による予防接種プログラム管理への移行、意思決定とアカウンタビリティの向上です。
「ポリオが最も流行している地域は、基本的な医療や福祉の欠如に直面している地域でもある」とジャファリ氏。ジャファリ氏は、「ポリオプログラムが(単一の)予防接種というより、統合されたアプローチであるとみなされるよう、ほかの基本的な医療や福祉との連携を強化、統合する」ことが目標だと述べました。
また、一部の地域では、予防接種キャンペーンの実施方法に問題があったり、ワクチン接種へのためらいがあることで、未だに子どもたちにワクチンを接種できないことがあります。ジャファリ氏は次のように述べます。「この新しい戦略は、新しいアプローチ、新しい戦略で地域社会を巻き込み、新しい協力関係を築くことを目的としています」
世界ポリオデー特別プログラムでは、世界保健の専門家が、新戦略の一つとして、循環型ワクチン由来ポリオウイルスである cVDPV2 に対処するための新型ワクチンの配布を拡大することを取り上げました。この新型経口ポリオワクチン2型(nOPV2)は、子どもたちをポリオから守る一方で、遺伝的に安定しており、ウイルスが力を回復してワクチン由来ポリオを引き起こす可能性が低いものです。既にベナン、チャド、リベリア、ニジェール、ナイジェリア、コンゴ共和国、シエラレオネなど、アフリカの複数国で導入されています。
この新型経口ポリオワクチンは、「最も困難な課題を克服するためのポリオプログラムの革新性を示す例」だと、WHOポリオ担当ディレクターのシニアアドバイザーであるシモナ・ジプルスキー氏は述べています。「世界中のパートナー、科学者、リーダーたちによってnOPV2が開発されました。これこそ、ポリオを永久に葬るためのコラボレーションです」
今年のプログラムでは、アフガニスタンとパキスタンのポリオワーカーの力強い映像が紹介されたほか、ロータリー会員が日本を含む各地でのプロジェクトやイベントを紹介し、ポリオ根絶活動への認識を高めました。
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>> シェカール・メータRI会長による世界ポリオデーのメッセージ
2021年10月25日