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世界的ネットワークを築く力:ローターアクトの強みを知る

10月、デンマークのローターアクターは、海外のプロジェクトを支援するため、コペンハーゲンの公園で5kmのランニングを含む募金を実施し、その間にゴミ拾いも行いました。

きっかけは、ニュージーランドのローターアクターからの呼びかけでした。それは、3つの致命的な病気に対するワクチンを子どもたちに接種するプロジェクトへの関心を高めるため、駅伝、ヨガ、ダンスなどのチャレンジを通じて募金を行うというもの。この呼びかけに、デンマーク、ジャマイカ、メキシコ、ウガンダなど、世界各地のローターアクターが応じました。

このプロジェクトは、ニュージーランドとオーストラリアのロータリークラブが主催するものです。太平洋地域の9つの国・地域の子どもたちに、ロタウイルス、肺炎球菌、ヒト・パピローマウイルス(HPV)のワクチンを接種することを目的としています。ロタウイルスと肺炎球菌の予防接種は、胃腸炎、肺炎、髄膜炎、菌血症による病気や死亡を減らすことができます。また、思春期の女児にとっては、HPVワクチンを接種することで、後に子宮頸がんを予防することができます。

世界保健機関(WHO)の報告によると、5歳未満の子どもの死因として、下痢と肺炎が上位を占めています。しかし、子宮頸がんの発生率が高いクック諸島、キリバス、ナウル、ニウエ、サモア、トケラウ、トンガ、ツバル、バヌアツでは、先進国で行われているような治療法がないと、活動の陣頭指揮を執るロータリー会員、ジャッキー・ヒンチクリフさんは話します。

このプロジェクトのために、世界各地からチャレンジに参加できるようにするというアイデアは、ローターアクターから生まれました。ヒンチクリフさんは、感銘を受けずにはいられません。「彼らの貢献は本当に素晴らしいと思います。私たちから活動を要請したわけではありません。彼らはこの草の根のプロジェクトに関心を寄せ、そして自ら参加を希望したのです」

数字で見るローターアクト

  1. 512

    少なくとも一つのローターアクトクラブがある地区(98%)

  2. 342

    多地区合同情報組織(MDIO)のメンバーとなっている地区 

  3. 66%

    少なくとも一つのローターアクトクラブがMDIOのメンバーとなっている地区の割合

  4. 87%

    MDIOに入っている地区に所属するローターアクターの割合

  5. 78%

    ローターアクトクラブへのリーダーシップ研修を行っているMDIOの割合(また、83%は地区ローターアクトリーダーへの研修を提供)

  6. 74%

    多地区合同の奉仕プロジェクトを実施しているMDIOの割合(最も高い関心が寄せられる分野:環境、ポリオ根絶、教育支援)

ローターアクターの活動により企業からの助成金4,000ドルが追加されたこの予防接種プロジェクトは、オーストラリア・ニュージーランドでのロータリー100周年を記念するものでもあります。ローターアクターは、運動チャレンジを通じて予防接種活動を応援するキャンペーン「Move for GECAF」を実施し、ソーシャルメディアで話題を集めました。

ローターアクターは、運動の様子を撮影した写真やビデオをソーシャルメディアで公開しつつ、ワクチンの必要性についてのメッセージを伝え、クラブや国境を越えて互いにつながり、互いのプロジェクトを支援しました。コロナ禍を背景としたソーシャルメディアやZoomの活用も進み、このような活動がおおいに促進されました。

このキャンペーンでは、ブラジル、ドイツ、インド、トルコのローターアクターも参加しています。その一例が、世界の森林再生を目的としたローターアクトの活動「Treety of Generations」です。この植林活動は、ドイツのローターアクターが、インドとエクアドルのローターアクターと協力し、2020年3月に開始しました。

ドイツのローターアクター、ドミニク・ヒューンドルフさんは、「空き地に木を植えることを世界中のクラブに呼びかけ、必要な支援を提供している」と話します。これまでに、ドイツ、エクアドル、インド、モーリシャス、シエラレオネなどで、約2,000本の木が植えられました。

「緑豊かで持続可能な世界を作る」といった切実なニーズと効果的な解決策があれば、ほかのクラブの関心を引くことができると、ヒューンドルフさんは話します。また、パートナーを見つけるには、ソーシャルメディアが有効です。「クラブのウェブサイトやインスタグラムなどのソーシャルメディアは、クラブが特定のプロジェクトについて関心が一致するかどうかを判断するのに適したプラットフォームです」

よく練られたプロジェクトであれば、サポートを得られるとヒューンドルフさんは信じています。「共同作業に必要なのは、合理的でしっかりとしたコンセプトと、それを成し遂げるための高いモチベーションです」と語ります。

トルコのローターアクターも同様に、進行中のプロジェクトを拡大するために、他クラブへの呼びかけを行っています。これらのローターアクターは5年以上にわたり、乳がん撲滅のための自己検診と早期発見に対する認識を高める活動を行ってきました。2019年、ローターアクターはプロジェクトの拡大を決定し、現在、国内13のローターアクトクラブに加え、ガーナとブラジルの2つのクラブとも協力しています。

2019年10月、ローターアクターは4回のセミナーを実施し、397人に自己検診の重要性について情報を提供しました。また、乳房模型やパンフレットを使って256人に情報を提供しました。

イスタンブールのローターアクターであるブラク・クックさんは、プロジェクトを拡大するには課題もあったと話します。「パートナーを見つけ、そのパートナーとの協力方法を学ぶのは大変でした。呼びかけを行うのが遅かったため、大きな機関やNGOと提携する機会を逃してしまいました。また、適切な人と連絡を取り、目標を達成するための努力が必要とされました」

しかし、その過程でいくつかの重要な教訓を得ることもできました。ローターアクトの多地区合同情報組織(MDIO)は、他国の代表者と連絡を取るのに適した方法だとクックさんは話します。

衣類の寄贈プロジェクトでは、500以上のYes Bank銀行の支店が受取所となり、ローターアクターが各支店から衣類を回収しました

インドのローターアクターは、2020年に地元MDIOであるSEARIC(South East Asian Rotaract Information Center)が主催する衣類寄贈プロジェクト Mega Cloth Donation Drive に参加し、Yes Bank銀行と提携しました。カルカッタのローターアクターであるスリジタ・ネオギーさんは、参加の理由として、「インドの最大のお祭りであるディワリを目前に控え、みんながきれいな服を着ることができればよいと思った」と話します。「大量の服が寄贈され、全国のYes Bank銀行の支店で集められました。最寄りのローターアクトクラブを特定して、ローターアクターが衣類を回収し、それらを必要とする人びとがいる地域に寄贈しました」

ローターアクターは以前から、交流やプロジェクトのために集まることが多々ありました。コロナ禍においても、多くのローターアクターはZoomミーティングを含むソーシャルメディアのイニシアチブ「World of Rotaract」を通じて、ゲーム、講演、パーティー、コロナ禍における体験談の紹介など、さまざまな活動をしています。

Zoomミーティングでは、アイデアを共有したり、プロジェクトを推進したりできました。冒頭の予防接種プロジェクトを実施したニュージーランドのローターアクターも、このプラットフォームの世界的なつながりから多くを得ました。「World of Rotaractは、メッセージを発信するための素晴らしいネットワーク」だとベッキー・ギブリンさんは話します。

デンマークのローターアクターであるフィリップ・フリントさんも同じ意見です。「World of Rotaractは、多くの国際的な交友関係を築く土台です。ギブリンさんとは直接に会ったことはありませんが、何時間も真剣に話したり、冗談を言い合ったりして、今では大切な友人です」

そのため、ギブリンさんから予防接種プロジェクトへの協力を依頼されたとき、フリントさんは迷わずクラブのメンバーを集め、プロジェクトを支援するために公園でランニングを行い、約2,500ドルを集めました。「今回のプロジェクトは、ローターアクターが短期間でどれだけのことを実現できるかを示す例となり、ローターアクターとロータリアンが支援し合えることを示す機会ともなりました」

本稿は「Rotary」誌2021年3月号に掲載されました。

世界ローターアクト週間は、世界中で活動するローターアクトの成功を祝い、その意義について認識するための特別な一週間です