Skip to main content

一緒に食べて学びあう:趣味が共通言語に

グルメのロータリー親睦活動グループが世界を結ぶ 

文: 写真:

太陽が降り注ぎ、そよかぜと鳥の声が心地よいある春の日、ローマ近くのワイン醸造所「Cantine Santa Benedetta」に、50人以上のロータリー会員と友人たちが集まりました。私たちは、若葉が出始めたばかりの広大なブドウ畑を見渡しながら、古代ローマ路のオリーブの木陰に立ち、「Rosa tonic」と呼ばれるカクテル(ロゼワイン、トニックウォーター、ローズマリー、ブドウシロップ)を飲みながら、300年以上の歴史を誇るこの醸造所についてオーナーから話を聞いていました。

左から:ローマ近くにあるワイン醸造所「Cantine Santa Benedetta」でのパスタ作り教室のテーブル。ブドウ畑で育ったブドウを使ったロゼワインのカクテル。卵入りパスタは濃いソースやスープに最適です。ブドウ畑と醸造所の歴史について説明するベネディッティさん。

私が参加したのは、「グルメのロータリアンの世界親睦活動グループ」による初めての国際的な集まり。このグループには世界に500人ほどのメンバーがおり、そのうち約300人がイタリア人です。共通の趣味に基づいて結成されたロータリー親睦活動グループは100以上あり、バイクやサーフィン、マラソンなど多種多様です。このグループのメンバーの共通の趣味は、もちろん「食べること」です。

中庭に移動した私たちに、醸造所のオーナーがパスタ作りを実演してくれました。小麦粉で井戸のような形をつくり、そこに卵を割り入れて混ぜ、塩少々とオリーブオイルをまぶして生地を練り、ワインを入れて卵のくさみを取ります。「祖母は卵しか使っていませんでした」とそっとささやくのは、通訳担当のクリスティナ・ベレッタさん(ミラノ・ヨーロッパ・ロータリークラブ会員)。ベレッタさんは長年、グルメ雑誌の編集者をしていました。

パスタ作りの実演が終わったら、今度は私たちの番です。ワインの樽の上に長い板を置いただけの即席テーブルには、それぞれの参加者のために小麦粉の井戸が既に作られ、そこに卵やほかの材料が置かれていました。周りのロータリー会員たちは、巧に卵を割って小麦粉と混ぜ、こねて麺を作っています。簡単そうに見えたので、私も同じようにやってみることにしました。

しかし、すぐに後悔することに。割った卵は小麦粉の井戸の外に出てしまい、テーブルの上に広がってしまいました。急いで小麦粉を卵の上に寄せ集めましたが、狼狽していたため小さなカップに用意されていたオリーブオイルとワインを入れるのを忘れてしまいました。

手に卵や生地をべっとりとつけたまま、私は大笑いしました。ベレッタさんの顔をおずおずと伺うと、彼女は生地をあと数回練ってから「これでよい」という合図を送ってくれました。

左から時計回り:『La Buona Tavola』誌の編集長でソムリエであるロッコさん(左)と、グルメのロータリアンの世界親睦活動グループの委員長であるカローロさん。料理は舌だけでなく目で食するもの。「ワインや美味しい料理について話すとき、みんな笑顔になります。みんな嬉しそうです」と言うのは、グルメ編集者の仕事を引退したロータリー会員、ベレッタさんです。グループのメンバーたちが作ったパスタは、ランチに食卓に上がりました。

大失敗に終わったパスタ作りの後、ペストソース作りのコンテストが始まりました。そこでは、どのレシピが正統かという盛んな論議が展開されました。ジェノベーゼ・ペストソースの伝統的な材料(バジル、にんにく、塩、松の実、チーズ、オリーブオイル)についてベレッタさんが説明すると、チーズはペコリーノかパルメザンかという議論に発展。グループ委員長でシシリア在住のビンセンゾ・カローロさん(パスポート・メディテラニー・ディストリクト2110ロータリークラブ会員)が材料を混ぜてソースを作り始めると、周りに集まった参加者たちが歓声を上げはじめました。「ビンセンゾ、がんばれ!」。でも、彼がコショウを入れようとしたとたん、群衆は「ノー、ダメだ」とうなだれました。「南部ではコショウを入れますが、本格的なレシピでは入れません」とベレッタさんも辛口です。

その後、3人のロータリアンの審査員が小さなテーブルに集まり、ソースの出来や点数について真剣に審査をします。ソースを作った5チームの中からついに勝者が発表され、貢献を称えあった後で、やっと食べる時間に。その日のコースは、前菜がフォッカッチャのキャベツサンド、ペコリーノチーズとワインゼリー、ポルケッタ、ローストポーク。次にブラータチーズと手作りパスタ、牛肉の赤ワインソース煮。デザートは生クリーム入りのミルフィーユでした。

左から時計回り:グループのイタリア支部のリーダー、ベルナルドさん。ペストソース作りコンテストは接戦でした。パティオにあるローズマリーの香りをかぐグループメンバー、シニスカルチさん。ロータリアンのシェフたちが、メンバーが摘んだバジルの葉を使ってジェノベーゼ・ペストソースを作りました。 

左から時計回り:グルメに真剣なグループメンバーたちは、楽しむことも忘れません。 デロマ一家が経営するチーズ工場では、1日に約5万リットルの牛乳を使います。ジアンピエロ・トロヴァルシさんとペットの犬も参加。 デロマさんはペコリーノチーズを作るために羊を飼育しています。「イタリアには大農場はありません。中規模か小規模な農場ばかりです」とベレッタさん。「農家たちは農作物や動物を大事に育てています」

冗談まじりのライバル心はあるものの、クラブの枠を超えて会員が集うことのできるこの親睦活動グループを、カローロさんは愛しています。イタリアの会員だけでなく、今回の集まりにはドイツやトルコからもメンバーが参加しました。「親睦活動グループの良さの一つは、同じ趣味という共通言語をみんなが話せること。みな同じものを愛しているんです」とカローロさんは言います。

翌日、私たちはバスに乗って、ピノ・デロマさん(ローマ・フォロ・イタリコ・ロータリークラブ会員)一家が所有する羊農場とチーズ工場を訪れました。そこでプレゼンテーションを聞き、試食をした後、グアンチャーレ(豚の頬肉)のちょうど良い「カリカリ感」はどのくらいかについて、またも熱い議論が行われました。しかしそれが終わると、私たちに残された課題はただ一つ。デロマさんのクラブ仲間であるジェニー・ボーリン・パノッゾさんが全員にこう呼びかけました。「皆さん、準備はいいですか。このあと、死ぬほど食べることになりますよ」

左から時計回り:チーズの出来具合をチェックするカラカッパさん(右)。参加者の一人、ブラシオさん。 22kg以上の羊肉がデロマ一家経営の農場でふるまわれました。パスタはイタリアの代表食。「イタリアはこの親睦活動グループの活動場所に最適な国です。まずい食べ物やワインはめったにありませんから」とパノッゾさんは言います。トルコから参加したエンジンさん。スナックはカリカリした生のソラマメです。試食をするペニーニさんとボルジさん(シシリアのアチレアレ・ロータリークラブ会員)

 

本稿は『Rotary』誌2023年12月号に掲載された記事を翻訳したものです。

共通の趣味を持つメンバーから成る100以上のロータリー親睦活動グループについてご覧ください。


関連記事

ロータリアン国際スキー親睦活動グループで初の日本大会を開催(ロータリーボイスのブログより)