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モンゴルの環境危機に取り組む

ロータリー平和フェローがヤギ畜産農家たちの合意形成を図り、適正賃金の確保や草原保護を支援

記事 Seoha Lee

10月5~11日の週、全世界のロータリアンと学友が、経験をシェアし、互いにネットワークを広げ、ロータリーに参加しつづけるためのアイデアを交換します。学友参加推進週間(Reconnect Week)の活動のアイデアをご覧ください。

モンゴルでは、過放牧が原因でかつて肥沃だった草原の多くが砂漠化し、野生ヤギの畜産を生業とする人たちが苦境に立たされています。この環境問題はさらに、同地域における対立の激化にもつながっています。

ユ・ドンジュさんは現在、ロータリー平和フェローとして習得したスキル、そして持続可能な方法で生産されたカシミヤ製品を扱うLe CashmereブランドのCEOとしての立場を生かし、過放牧の抑制に取り組みながら、競争ではなく協力しあうことで草原を保全するよう畜産農家に呼びかけています。

モンゴルでは、春になると自然に抜け落ちる野生ヤギの毛の外側の暖かい部分を使用し、厚みのある冬用コートを売って生計を立てている世帯が数多くあります。この毛を手でとかし、カシミヤを作ります。

一方で、中間業者が多額のマージンを持っていってしまうため、農家はヤギの頭数を増やし、草原を拡大せざるを得ないのが現状です。しかし結果的には、過放牧と砂漠化が進み、畜産農家の生活が圧迫されるだけです。

ユ・ドンジュさんと協同組合に所属する畜産農家

ドンジュさんはかつて、韓国国際協力団(KOICA)のボランティアとして活動していた頃に、この負の循環を目の当たりにしました。同時に、ボランティア団体や企業が木を植え、砂漠化による近隣諸国での黄砂の被害を防ぐ活動に取り組んでいることを知りました。ドンジュさんは、この問題を根本から解決し、畜産農家の収入を増やすことで、過放牧をせずとも暮らしていける環境を作りたいと考えました。

そこでドンジュさんは、畜産農家がカシミヤを十分な価格で販売できることを保証する協同組合を立ち上げました。また、一定規模の牧草地一カ所で毎年飼えるヤギの頭数を算出し、その数以上にヤギを放牧しないよう協同組合員たちが互いに合意するよう取り計らいました。さらに、先代の畜産農家たちが実践していた「循環型放牧」を導入。これは、草原を3区画に分けて順番に使用することで、使用していない区画の草原を回復させるという方法です。

設立当初は6世帯しか所属していなかったドンジュさんの協同組合も、今では292世帯が所属するまでに成長しました。モンゴル政府も過放牧を減少させるさまざまな取り組みを主導していますが、ドンジュさんのアプローチは現地の農家にとって利益確保の方法が明確であるため、政府主導の取り組みよりも効果的で、地元有力者や協力団体もこの方法が地域全体を支えていると考えています。

このように現地の利害関係者と連携して地域の問題を解決する方法を、ドンジュさんはデューク大学(ノースカロライナ州)のロータリー平和センターで学びました。

「『平和』という言葉は漠然としていますが、もっと広く捉えるべき」とドンジュさん。「あらゆる問題には対立がつきものですが、解決策を見つけ、実際に解決するプロセスこそが平和構築なのです」

「あらゆる問題には対立がつきものですが、解決策を見つけ、実際に解決するプロセスこそが平和構築なのです」

KOICAでボランティアとして活動していたドンジュさんは、韓国のロータリー会員たちがモンゴルの森林再生を目指して立ち上げた「モンゴル緑化プロジェクト(Keep Mongolia Green Project)」の初期段階に携わりました。そこでドンジュさんが見たのは、現地の人たちと緊密に連携してニーズを把握し、プロジェクトを持続可能なものとするために奮闘するロータリー会員の姿でした。これに刺激を受けたドンジュさんは、ロータリー平和フェローシップについて調べ、デューク大学のロータリー平和センターでのフェローシップに申請して国際開発政策を学びました。

デューク大学には、社会起業家に特化したプログラムがあり、ビジネスを通じて諸問題を解決し、持続可能性を実現したいというドンジュさんの希望に沿うものでした。

このプログラムでは、専門家や活動家、研究者、元政府職員といった経歴を持つ学生たちが、日々、活発な議論を展開。ドンジュさんはその経験から、さまざまな視点を持つ人たちの合意形成(コンセンサス)を図るスキルを身につけました。

「ロータリー平和センターで出会った人たちから刺激をもらいました」とドンジュさん。「私がアフリカでビジネスを立ち上げたとき、アドバイスをくれたのも仲間の平和フェローでした。この仲間たちとは今もつながっており、彼らの活動からヒントをもらっています」

ロータリー平和フェローシップでの経験が社会の支援にも役に立っているとドンジュさんは言います。多くの場合、平和フェローは各自の受入クラブと緊密な関係にあります。ドンジュさんの受入クラブも、活動に誘ってくれたり、デューク大学の卒業時には数時間も運転して卒業式にかけつけてくれました。「私にとって受入クラブの方々は米国での両親のような存在です。今でも連絡を取り合っています」とドンジュさん。

さまざまな背景を持つ他の活動家や専門家にも、ロータリー平和フェローシップへの申請を呼びかけています。「あらゆる分野、あらゆるレベルで一斉にムーブメントが起これば、世界平和は実現可能です」とドンジュさんは話します。