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「持続可能な農業」の試み

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ロータリーとヘイファーインターナショナルによる小規模農業の支援が、食の安全と経済地域を変える

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青々と育った野菜に囲まれる中、前かがみになったジョー・カーさんが、ポケットナイフで弱った葉をむしりとり、ゴムバンドで束ねてオレンジ色の木枠に詰めています。 

鉄で補強されたビニールハウスには、野菜が8列、きれいに並んで植えられています。

「ここで少しのチンゲン菜を育てています。とても人気があって、一束約2ドルで売れます」とジョーさん。「すべて有機栽培で、化学肥料は一切使っていません。オーガニックの緑野菜はビタミンいっぱいですよ」

トンネル状のビニールハウスは、フープハウスまたはハイトンネルとも呼ばれます。これを作ったのは、Heifer International(ヘイファー・インターナショナル)と、リトルロック・ロータリークラブ(米国アーカンソー州)の会員たちです。

ビニールハウスのおかげで栽培期間が延び、チンゲン菜やトマトを早めに植えることができます。ここアーカンソー州中南部では、ロータリーとヘイファーの支援を受けた24戸の小規模農家で有機栽培が行われ、地元で増加する農作物需要を満たしています。

ヘイファーは、飢餓と貧困を軽減するために小規模農業モデルを支援してきた団体です。その使命は、地域経済の支援と健康の向上に取り組むロータリーの使命と合致します。この2つの団体が過去に何度も協力して貧困に取り組んできたことは驚くに足らず、今回の協力でも、環境に優しい農業と健康的な野菜生産を支援しました。

ヘイファーのスタッフ数名がリトルロックのロータリー会員でもあったので、その絆はさらに強化されました(ヘイファーの本部はリトルロックにあります)。

「互いの価値観が合致した」と話すのは、ヘイファー財団会長で、リトルロック・ロータリークラブ会員のアンデイス・ニールさんです。「ロータリーは、超我の奉仕、人びとへの奉仕です。ヘイファーでは、農家が責任をもって農作物を作り、地域社会で互いに学びあい、助けあい、分けあい、協力することで成功の術を学びます」

「持続可能な農業」という最新トレンド

今日、世界的に注目されている「持続可能な農業」。それは、環境に悪影響を与えることなく食糧を確保しつつ、農家を公正に扱い、地域社会をサポートする農業のあり方です。

米国その他の先進国では、大部分の食料を大規模農場で生産しています。そこでは特殊な機器を用いた単一作物の生産で人件費を削減し、食材を安く提供しています。

しかし、この方法では、化学肥料、多量の殺虫剤、その他の化学薬品の使用によって、環境に害を与えることもあります。

また、農業の法人化は小規模農家を衰退させる一因となり、現にアーカンソー州農村部では貧困率が上昇しています。

さらに、食べ物に対する人びとの関心も低くなります。

都市部では、全国流通ネットワークの発展に伴う「食の砂漠化」が起こっています。特に米国、イギリス、オーストラリアの低所得地域では、新鮮な食料へのアクセスが乏しく、栄養価の低いファストフードや冷凍食品に頼りがちになります。

一方、小規模で営まれる持続可能な農業では、地産地消のシステムによって食料を買えば地元にお金が落ち、地域全体を助けることになります。また、複数の作物を植えて土壌の質を整えることで、土地の最大利用が可能となり、肥料や殺虫剤の使用を抑えることができます。さらに、有機肥料を使うことで、作物の根のはりも良くなります。

収穫から消費者の口に入るまでの時間が短くなることから、その間に失われる栄養素も少しですみます。

最近では、持続可能な農業による健康上のメリットを認識する消費者も増えてきており、地産食物の市場を助けています。

「全国的な傾向として、食べ物がどこから来るのか、消費者はより強く意識するようになっている」と、リトルロック・ロータリークラブの元会長で、このプロジェクトを支えているシャロン ・ヴォーゲルプールさんは話します。「私は2児の母なので、食べ物の安全には本当に気をつけています」

また、別のロータリー会員のジョーダン・ビアードさんは次のように話します。「どう食と向き合うかで人生や健康に大きな差が出ることを、みんな分かってるんだと思います。食は、より活動的なライフスタイルと直結しているんです」

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ヘイファーのスタッフ(右)から有機農法のヒントを学ぶジョー・カーさん

ヘイファーの活躍

アーカンソー州では、ロータリアンとヘイファーが共同調査を行い、地産の作物に手つかずの需要が多くあることを突き止めました。アーカンソー州農務長官のウエス・ワード氏によると、貧困率が全米で4番目に高い同州では、食料に70億ドルが費やされ、その内63億ドルが州外からの購入に充てられているそうです。

「これは大きなチャンスで、小規模生産者には朗報です。小さい畑で作物栽培を始めて、それらを割増価格で販売できるでしょう」

カーさんをはじめ、アーカンソー州の農家は地域社会支援農業(CSA)ネットワークに参加しており、消費者は固定価格で事前に作物を購入するため、農家は、天候やその他の要因に左右されず、作物を市場に出すことができます。

ヘイファーは、持続可能な農法とアカウンタビリティ(説明責任)の理念を農家に教えます。また、農業研修の内容をほかの農家にも伝え、共に自立することの重要性を説きます。 

ロータリー会員は、マーケティング、財務、事業計画について助言を行い、作物の詰め合わせバスケットの販売支援をします。 

初期のCSA株主は150人で、社会奉仕団体や食糧バンクにも株の配当が行われ、「食の砂漠化」に苦しむ人々の支援に活用されました。現在、株主は450人に増えています。 

「詰め合わせバスケットのいいところは、みんなにおすそ分けできること。いつも一人じゃ食べきれないほどの量が入ってるので、職場に持っていきます。そうやって、私たちの試みをもっと多くの人に知ってもらうんです」とビアードさんは話します。

当初、 2018年までに資金的に自立した協同組合を設立することを計画していましたが、それを 1年早く達成できました。現在は責任者がおり、バスケットの収集・配布を管理し、新規市場を開拓する正社員4名を雇用しています。

新しい市場の一つは卸売販売だと、ヘイファーの管理統括部長でリトルロックのロータリアンであるベン・ワインブリンクさんは話します。協同組合が需要の高い4つの作物(葉物野菜ミックス、マイクログリーン[発芽後2週間~1カ月が経過した新芽と成育した野菜の中間の状態のもの]、トマト、ピーマン)に限定し、地元の食料品店に配達します。これにより農家は、CSA株主の消費量を上回るかなりの量を生産できます。 

昨年の初期卸売収入は、60,000ドルでした。

  • 4.00番目

    全米におけるアーカンソー州の貧困率

  • 6.00番目

    全米におけるアーカンソー州の肥満率

  • $70.00

    アーカンソー州で食糧に費やされる金額

  • $63.00

    アーカンソー州が州外から購入している食糧の額

このプロジェクトで使用されるビニールハウスでは、太陽熱を吸収することで、外気温が0℃であってもハウス内を26℃にまで上げることができ、ほぼ通年で生産が可能になります。3分の1の農家がビニールハウスを所有し、その多くが州政府からの補助金を受けました。

カーさんの場合、ボランティアが数回の週末を利用してビニールハウスを設置しました。1987年にワールプール社(白物家電の大手メーカー)を退いてから農業を始めたカーさんは、 2003年に地元農家のマーケットを開始。今では60以上の農家が参加しており、協同組合とハウスのおかげで彼の収入は増加しました。

「このビニールハウスの凄いところは、客が求める良質な作物を作れること」とカーさん。「チンゲン菜、ケール、ブロッコリー、にんじん、レタスは冬でも栽培でき、適切に管理すれば冬を通して収穫できます」

「持続可能な農業」を世界へ

持続可能な農業の方法は世界各地で異なりますが、原理は同じです。ヘイファーのプログラム責任者であるノエル・メイスさんは、家畜であれ作物であれ、生産者がまとまって市場に品を出せるようにする上で、協同組合が重要な役割を果たしていると説明します。

「現在は、市場を利用するアプローチを展開している」とメイスさん。「これまでヘイファーは、貧しい農家が家族を養うに足るようにするための支援に多くの時間を費やしてきました。しかし、私たちの使命は、飢餓だけでなく貧困をなくすことです。市場を活用しなければ、貧困は解決できません」

ビニールハウスを完成させたリトルロック・ロータリークラブのメンバーと、ヘイファーインターナショナルのスタッフ

 「空腹かどうかを確認するだけではなく、家族が消費する以上の作物を生産し、販売し、収入を増やして生活を向上させることが、私たちの使命です」

また、ヘイファーは、意思決定における女性の参画を促し、地域全体で共通の目的を立てることを奨励しています。貧困地域を改善するには、その地域の全員が参加する必要があるためです。

アフリカには、強固な酪農プログラムがあり、ヘイファーの仕事の多くは牛乳を扱っています。15~20の農家が一緒に協同組合に参加し、共に冷凍工場から処理工場まで使用できるようになります。また、農家は牛乳の協同組合を通じて、アボカド、レタス、トマトなどの農作物を販売し、経営の多様化を目指します。

今や消費者は、協同組合で、牛乳だけでなく新鮮で良質な果物や野菜も買うことができます。また、いつも良質の品を買えるという信頼にもつながります」

世界的に持続可能な農業が盛んになっている主な理由は、健康な食品を購入できる所得中間層が増えていることだとメイスさんは考えます。

「人びとはもう、短期の大量生産で大きくなった鶏肉を欲することはなく、地元産の鶏肉なら、値段が2~3倍でも喜んで買ってくれる」と、メイスさん。「人びとが一緒になって、市場の求める持続可能な農法で、鶏肉、野菜、果物を栽培することは素晴らしい機会だと思います」

より大きな目標は、他の農家も同様のモデルを用いるよう奨励することだと、ワインブリンクスさんは話します。「米国南部には無限の需要があります。特に、地元産の食品や有機栽培の食品です。消費者の関心が続く限り、貧困地域の農家の多くを助けるチャンスがあるんです」

カーさんは新しい展望を抱いています。「いままで多くの機会を与えてもらいました。一番大きいのは、ヘイファーがこのプログラムの支援をしてくれたこと。そして、ロータリーがビニールハウスを作るのを助けてくれたことです。それまで私は、土地を準備しようにも資金と時間が十分になかったのですが、支援のお陰で前に進むことができました」

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  1. ビニールハウスの組み立てに取り組むリトルロックのロータリー会員 

  2. ビニールハウスの覆いを引っぱる会員。このハウスにより栽培期間を延ばすことができます。

  3. ビニールハウスは、トラクターで入れるほどの広く、高い構造をしています。写真は、入り口付近の調整に取り組む会員たち。 

  4. このビニールハウスによって、12月での収穫が可能になりました。

  5. 持続可能な小規模農業は、新しいビジネスのチャンス。ビニールハウスは、その成功を支える大きな味方です。

  6. ジョー・カーさん。ロータリーとヘイファーの懸け橋となりつつ、新しいビジネススキルを学んでいます。

  7. カーさんの息子であるコーデルさん(左)も農家による市場管理を手伝っています。

  8. 地元農家が自ら農産物を売るマーケット。今では60の農家が参加しています。